いよいよ組立工程に入ります。
組み上げは最も神経を使う工程で、正しい順番で、正しく組んでいかなければ、満足のいく仕上がりになりません。自分の好みに合わせて、あるいは釣り方に合わせてグリスの稠度など調整することができるようになると、満足度の高いオーバーホールになりますが、初めはスタンダードなやり方で新品状態を目指すと良いです。
何かが間違っていると、わずかな隙間ができたり、カチッとネジが決まらないなど、ちょっとした違和感が生じます。そのサインを見逃さないよう神経を研ぎ澄ませていきましょう。
組み上げていくにあたり、先にベアリングの回転チェックを行ない、交換すべきベアリングは同サイズの新品を用意しておきます。ベアリングのチェック方法は、デザインカッター(筆の柄はさらに小さなノイズまで検知できる)の柄の部分を使って、耳元でカッターをクリクリ回して、振動や音を確認します。高速回転する場所にあるベアリングは、わずかなノイズでもかなり目立ちますので、迷ったら交換する方が良いです。
それから使用するグリス・オイルも必要になります。シマノ純正のグリス・オイルの使い分けは、こちらの一覧をご参照ください。
組み上げ工程においては、慣れないと気持ち悪いかもしれませんが、パーツをつかむ指にゴムのサックをつけると皮膚の塩分をパーツにつけずに済みます。医療用の薄い手袋でもよいです。
それでは組み上げ開始です。
組み上げ順は、分解したときの逆で、トレー上の最後に置いたパーツから組んでいきます。
本体の中央部分にグリス(SHIP-0)を塗布します。以下グリスはしばらくSHIP-0です。
ベアリングがおさまる場所(ハウジング)にもグリスを塗っておきます。
回転チェック済みのベアリングを入れます。
次にクラッチプレートの本体接地面にもグリスを塗布しセットします。
クラッチスプリングの長い方の足を小さな穴に入れ、クラッチツメを写真のようにセットします。
クラッチカムをセットします。まずクラッチツメの棒状の部分とクラッチカムの穴をセットしてから、スプリングを押しながらプレートの穴とクラッチカムの突起を合わせます。正しい位置を覚えるために、クラッチスプリングなしでやってみると良いです。
ここは初めは時間がかかるかもしれませんが、根気よくカチッと決まるまでやってみてください。
正しい位置に決まったら、クラッチツメを上から指で押さえながら、2本ツノが生えたクラッチカム押さえ板を取り付けます。ネジの頭が一番小さくで長さのある8頭身のネジ2本で止めます。この2本が止まれば、クラッチツメは外れませんので一安心です。
クラッチレバー受けの両面にグリスを塗って、プレートに通しつつ所定の位置へ。
クラッチレバーを装着します。レバーは、中途半端に飛び出しているアルミの棒に先にレバーの溝を入れてからプレートにきちんと入れてください。内側に固定ボルトで止めればOKです。
ここで1点注意です。固定ボルトにはネジ山の切り方が2種類あります。ネジ山の感覚が広いものがタッピングビスと言って、プラスチックのような素材にネジ自ら切込みを入れながら入っていきます。
もう一つのネジ山が細かくたくさん切ってあるネジは、土台が金属など固いもので、雌側にもネジ山が切ってある場合に使います。
注意というのは、プラスチック(CI4+やザイオンも)が土台の場合、ネジが自ら切り込んで入っているので、雌側に一度切込みがついています。したがって、入っていたネジを抜いて、再度締めこむ場合は、一度切られた切りこみと同じところにネジを入れていかないと、違う切込みを増えネジが止まらなくなってしまいます。
要は一度ついた切込みを探して締めこんでいきたいので、ネジの締めはじめに、少し回して戻してを繰り返しながら軽い力で入っていくところを見つけてから、締めこんでくださいということです。
ほとんど力を入れなくてもスルスルと入っていくところが必ずあるので、ちょっと固いと思ったら力づくで締めこんでいかないようにしてください。
次にレベルワインド部です。
まずウォームシャフトにグリスを塗布し、座金を先端に入れてからパイプの中に到着します。
それから黒いワッシャーと白いプラスチックカラーを装着します。このカラーはベアリングに替えることができます。(ベアリングチューン)4×7×2.5のサイズです。
折角なのでベアリングチューンしておきます。
ベアリング面にもグリスを塗布し本体に装着していきます。本体内側にレベルワインドを用意してからパイプを通します。
レベルワインドの穴が見える位置で、ウォームシャフトピンと座金を装着します。ウォームシャフトピンは正しい位置に収まると、座金が入る分だけ奥に下がります。座金を入れてちょうど面一になる感じです。
ここでオイルを少量塗布してからキャップを締めます。このキャップは、あまり強く締めず、一番下まで到達したらそれ以上力を込めなくても大丈夫です。Oリングがあり簡単に緩んだりしませんので。
キャップを付けたら、キャップが本体のガード内に隠れるくらいまでパイプを回します。
正確な位置は、ドライブギヤ軸固定板を乗せてみると分かります。正確な位置でパイプを押し込んでから、レベルワインドガイドという銀色の棒を差し込みます。先端が細くなっている方から入れでください。
つづきは次回です。