今回はリールの内部がいったいどのくらい汚れるのかを見ていただこうと思います。
これは実際にOHご依頼をいただいたリールのもので、ピニオンギヤ、ピニオンヨーク、ドライブギヤの清掃前と清掃後です。
淡水での使用のみで、日頃の清掃などセルフメンテナンスはほとんどしていない状態のリールです。
淡水限定の場合、塩分がほぼないので錆びや腐食といったことはあまりありません。もちろん水にはさらされますので、全く錆びないというわけではありません。海水での使用に比べればそのような被害は少ないです。
またこのリールは、機械にとっての一番の敵である「全く動かさずに保管」という状態とは無縁で、ほぼ毎日出動のものでした。一般的な使用頻度のものよりは汚れが溜まりやすい状況ではあったと思います。
リールの内部には、ギヤやクラッチ動作に関わるパーツ、スプリングなど破損しやすい部品が数多く内蔵されています。そのため本体カバーやフレームにより保護されており、簡単には内部にまでホコリやチリなどが入らないように設計されています。しかし、液体や気体は浸入することがありますので、内部の汚れの多くは液体、つまり汚れた水が運んでくると考えられます。
リールを分解清掃していると、内部の汚れからどのようなフィールドで使われているのか分かることがあります。マッディな野池が多いアングラー、ステインの湖、コケの多いエリア、など汚れから想像できます。
渓流で使用してるリールは、毎回きれいに水洗いしているようなもので、汚れはほぼない代わりに、オイル分もすっかり無くなって潤滑不足になっています。
リール内部には新品時よりグリスが塗布されており、わずかな水分や汚れは混入しても、ただちに不具合が生じることはありません。わずかな汚れが蓄積されていくとある一定レベルを超えたときにグリス自体が不純物をたっぷり含んだ黒い物体に変身します。こうなると潤滑ではなく研磨を開始しますので、一度きれいにしないと不具合の原因になっていきます。
写真のような汚れにより、ハンドルを回した時の感触は、ゴトゴト、ゴツゴツとなり、スプール回転時はジャーというノイズを発します。
室内で使う機械でも1年も掃除をしなければ、だいぶホコリやチリが積もりますので、屋外で使用する機械はさらに汚れが溜まることは簡単にイメージできると思います。私が大学生の頃、トンネル内の照明器具の上に積もる粉塵を掃除するアルバイトをしたことがあります。当時はスパイクタイヤが禁止されていませんでしたので、削り取られたアスファルトの粉塵が1センチくらいの厚みで照明器具の上に積もっていました。汚れもあそこまで行くと芸術的に見えました。
リールはそこまで酷いことにはなりませんが、たまには清掃、注油のセルフメンテ、ある程度の期間使用したら内部の清掃、グリスの塗り替え、をお勧めします。そして、釣りに行かなくても、たまにハンドルと回してあげれば、錆びや固着を抑えることができます。スピニングリールの場合は、ラインローラーも輪ゴムで回してあげてください。