こんにちは Selffishの鈴木です。
今回は、ABU アンバサダーモラムSX1601Cウルトラマグのオーバーホール依頼です。
この機種は、ABUリールの伝統であるラウンドシェイプをあえて採用し、その中に最先端の技術を盛り込んだリールで、「誰にでも使いこなせる最先端技術の結晶」というコピーのとおりで、コアなファンに支持を受けています。当時は画期的なマグトラックスブレーキという15段階のポジションを持つシステムを搭載しました。これにより従来は難しかったライトリグのピッチングやフリーフォールを可能にし、新たなメソッドを次々に確立していきました。さらに6.3というギア比と大口径スプールの組み合わせで、ハンドル1回転巻き取り量70cmを確保し、手返しの良さも実現した夢のようなリールでした。
今回はウルトラマグとIVCBの2機種を同時に作業させていただき、かなり興奮気味の作業となりました。
このリールの特徴は各パーツの軽さで、重量感のあるパーツはほとんどありません。今ではもっと軽いものはありますが、20年前のリールにはこれほど軽いパーツはなかったと思います。
軽さを突き詰めるとどうしても強度が弱くなりますので、各部に使われている超軽量金属や樹脂のパーツがこのリールの弱点になると言えます。
樹脂は乾燥や劣化によりどうしても破損しやすくなりますし、軽量金属は塩に弱いので汽水域で使用すると腐食しやすいため、どちらも十分なケアが必要です。
これらを防ぐために有効なのは、やはりグリスによる潤滑で、塩の攻撃を防御しつつ劣化を抑えていくことが、長持ちの秘訣です。板バネなど破損しやすいパーツも多く含まれていますので、パーツ在庫を確保しておくことも大切になります。
ギア周りは摩耗や変形、腐食はほぼなく、良好な状態です。ピニオンギヤの歯の部分が変形しているものをよく目にしますが、今回のリールはそれもなく、まずまずの状態でした。
このリールによくあるのはハンドルノブのガタツキですが、これはハンドルごと交換する以外改善方法がありませんので、ガタガタになってきたらカスタムハンドルの換装で改善します。
他にもいろいろとこのリールでしか見たことがない構造があり、作業していて全く飽きることがありません。
今でもOHのご依頼が多く、みなさん非常に良い状態で使用されているので、まだまだ現役です。