Selffishが教えるリールオーバーホール術(第8回)パーツ編

明けましておめでとうございます。記事を書いているうちに年が明けていました。

今回からパーツ編として、交換すべき消耗パーツなどをご説明します。

ベアリングから始めていきます。

ベアリングの発想はすでに古代エジプトで実現されていました。重たい石を移動するときに、たくさんの丸太を下に敷いて、その木の上を転がしながら移動していました。その時代から、より小さな力で物を動かすために回転運動を利用するという理屈は活用されていました。

ベアリングはスムーズな回転運動に欠かせないパーツで、リールの性能においては非常に重要な部分を担うパーツになります。上位機種になるにつれて、搭載されているベアリングの数が増えていくため、新品のカタログや製品説明の中に、○○ボールベアリングと目立つようにアピールされています。中には、リールのボディに11ボールベアリング(11BB)などとロゴマークのように表示しているリールもあります。

このベアリングですが、どれほどの回転性能なのかというと、非常に古いいわゆるオールドリールと言われるベイトリールにはスプール部にベアリングではなく、ブッシングという真鍮のドーナツ型のパーツを使用していました。その回転性能を10とすると、ブッシングを同サイズのベアリングに交換すると、20以上くらいの性能に進化します。正確なスペック向上の数値はありませんが、フリーでスプールを回転させた時の違いはびっくりするほどの差です。

高速回転性能だけではなく、滑らかで静かに、軽く回転するため、ハンドルの回転が非常に軽く滑らかなリールに仕上がります。

このベアリングですが、こちらは消耗パーツになりますので、寿命があります。ある時点を境に回転性能が徐々に低下していき、ノイズが出てきたり、回転が悪くなってきたりします。

また、リールは水辺で使用する道具ですので、当然汚れや水分により、異物の混入、錆びといった試練にさらされます。

ある程度使用してノイズを発しているベアリングを新しいものに交換すると、リールを新品時の状態に近づけることができます。

リールに違和感を感じるようになってきた場合、その多くはベアリングの回転不良によるもので、ベアリングの交換で改善できることがほとんどです。

リールに使われているベアリングは、大半はミニチュアベアリングと呼ばれる範疇のもので、内径×外径×厚さで規格品となっているものがほとんどです。このサイズを計測すれば同じ大きさの新しいものを購入することができます。

ベアリングにはいろいろな種類がありますが、その中の深溝玉軸受という種類のベアリングをリールではよく使用してます。稀にベアリングにさす軸をささる方向に押す力(アキシアル荷重)がかかる強く箇所にアンギュラ玉軸受という種類のものを使うことがあります。本当に稀です。

材質による違いもあります。ベアリングの構造は、外輪と内輪(軌道輪)、ボール(転道体)、保持器(ボールが滑らかに動くようにする部品)からできています。

リールに使われるものは錆びに強く、摩耗しにくいステンレス製のものが費用対効果から最適であり、多くのベアリングがステンレス製のものです。回転時の摩擦をさらに軽減し、より小さな力で回転するように転道体にセラミックボールを使ったものがチューンナップ用として販売されています。

最近では転道体が二重になっているダブルボールベアリングなどベアリングもどんどん進化しています。

特殊なものは性能も高く、飛距離や落下速度を大幅に向上させることに一役買いますが、たくさんのリールをオーバーホールしていると、ほとんどの場合、ベアリングは錆びて回転が悪くなっていますので、錆びが出るまでの間の性能の差であり、高性能なものがご長寿というわけではなさそうです。

あとは分解整備していく過程で、回転不良になっているものを見つけて交換するだけです。

ちなみにSelffishでは、高速回転を必要とする箇所(ベイトリールのスプール両軸受け、スピニングリールのラインローラー部など)には、ステンレス製のもので内部のグリスがオイルで仕上げてある仕様のもの(チューンドベアリング極転)やセラミックボールベアリング(極転C)をご用意しています。

一方、高速回転性能よりも静粛性、滑らかさが必要な箇所(低速で負荷をおって回転する箇所、上記以外のほとんどの部分)にはグリスインのノーマルタイプで交換しています。

ノイズの出ているベアリングのチェック方法は、前回の記事でご紹介したデザインナイフの柄を使って行うことができます。高価な測定器を使って図るのも良いですが、釣りをしている中で感じ取れるノイズならこの測り方で十分です。ポイントは耳の近くで柄の方を回して音と振動をチェックすることです。ゴリゴリは即交換、シャラシャラ程度ならまだ使えますが、気になる場合は交換してください。

最後にベアリングサイズの測り方ですが、前回記事でご紹介したデジタルノギスを使います。

内径×外径×厚さ(6mm×12mm×4mm)のベアリングです。

まず、内径。こちらはピタリの数値にはなりません。少し小さめの数値が出ますので、インチサイズのベアリングの可能性があるリール(アメリカ製のもの)は要注意です。

外径と厚さは普通に計測すればかなり正確に表示されます。

次回は純正パーツの交換についてです。

 

 

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